書籍・雑誌

【本】大東亜戦争の実相@瀬島龍三

050827_008 戦後60年、憲法を変えて戦争に行こうとする人たちと、憲法はゼッタイ変えずに世界のどこで戦争が起きようと日本は知らんもんねー、というある意味典型的な今の日本人の思想像それぞれに対し、著者瀬島龍三さんは何を語られるだろうか。

 それにしても戦争遂行機関、帝国大本営の中枢(陸海軍参謀)に居た瀬島さんが本誌で語る戦史は、冷静沈着で客観的事実として今まで見聞きしたそれとだいぶイメージが違いすぎていることに驚く。「大東亜戦争」という名称は、戦争の大義名分を表す大東亜共栄圏建設を目指すための戦争という名称ではなく、単に当時の地域呼称に基づいて大東亜地区で行う戦争、ということで決めたのだという。決めた機関に居た人が語ってるのだからそうなのだろう。きっと。あと、アメリカとの開戦にいたる経緯は、あらゆる平和解決のためのオプションを実行していった過程について私たちはほとんど何も知らされていないことを改めを実感する。特に戦時内閣首班であった東条首相兼陸軍相でさえ、開戦直前「まだだ!外交5、戦争5で行け」と最後まで外交解決の可能性を探っていたことなど意外だった。

 著者瀬島龍三さんは、戦後、日本の経済界にも尽力された方のようだが今もご存命なのだろうか。本書の最後で語られている7つの教訓など、歴史認識を改めさせるだけでなく国家が戦争を回避するためのエッセンスが凝縮されており示唆に富んだ内容。途中、あまりに淡々と戦争遂行中の史実を語られる部分は興味をそがれる部分もあったが、アメリカとの開戦経緯については圧巻、最後まで読んでよかった。

 最後に、もっと日本人が日本人の誇りと世界平和のために語り継がなければならないこととして、1853年のペリー来航から明治維新の頃までの国際情勢、そして日清日露戦争、支那事変、満州事変、日米戦争までの国際緊張関係を軸にした戦争史観があり、それを東アジア全体で共有しなければならないと思ったりもするが・・・難しいよなぁ。特に日本の大陸政策の必要性とか。。

【本】亡国のイージス(上・下)@福井春敏

050807_017 上・下合わせて1000ページを超える長編だが、これぞ読書エンターティメントの醍醐味、あまりの面白さに一気に読みきった。通常、2、3冊同時に本読むことが多いが、これを手にしたらこれだけに集中しないとダメだった。自衛隊の護衛艦が暴走して東京にミサイルの照準を合わせる、という単純なガイドストーリーなど何の役にも立たない。上巻の内容だけでこれは本当に話に聞いていた「自衛隊の護衛艦が暴走して東京にミサイルの照準を合わせる」話なのか?違う作品か?と疑わせるほどの意外性に溢れる展開、三国志の諸葛孔明と曹操を髣髴とさせる騙し合いや駆け引き。
 早速、今から映画見に行くかなー?

【本】ベトナム戦記@開高健

050730_002 「すさまじい」の一言に尽きる。小説家開高健が亡くなってもう17年になるらしいが、1964年11月から4ヶ月間、ベトナム戦争の現場で取材したルポルタージュである。日常的なテロ、デモ、クーデター、今の中東イラクの騒ぎどころでない現場の戦争状態が痛いほど伝わってくる。いや、イラクの場合、情報を知らされていないだけかもしれないが。
 当時のベトナムの極限的貧しさ、アメリカの非道さ、迫るベトコンの恐怖、無意味な戦いに身をやつす米兵とベトナム政府軍兵士の憂い。
 命を懸けて戦争取材を敢行した開高健が生きていたら、昨今のイラクにおける日本人殺害をどう見、どう語るであろうか。
 時に夏休み、終戦記念日が近い。長崎で被爆したお義母さんを交え子供たちと戦争と平和について語るため、DVD「昭和と戦争」8巻を注文、この「ベトナム戦記」読み終えてそのまま「亡国のイージス」を読み始めた。非戦の誓いがじわじわと崩れつつある気がする。

【本】パフォーマンス・マネジメント

050730_003 月イチのビジネス書評。島宗理(しまむねさとる)という大学の先生が書いた、要は行動分析学の教科書のようなもの。***ができない。***の問題が解決できない。***が改善されない。これら、自分の周囲で発生するナイナイづくしの問題、とかく「***さんが***だから」とか「社長が***ないから」とか自分以外の他者にその原因を着せ、自分の行動は一切省みないことに、それらが改善されない根本原因が潜んでいることは日ごろ感じているところ。
 で、この「パフォーマンス・マネジメント」はそういった問題解決の足を引っ張る「個人攻撃のわな」を一切排除。行動原理一つ一つにプラス要因である好子とマイナス要因である嫌子を見出し、さらにそれらから先行条件(A)、行動(B)、そして結果(C)を抽出、チェックシートや物理的仕組みを用いて嫌子を摘み取り、好子を導き出すことで死者にできないことは全て出来るようになる、と説く。
 ま、そうなのよ。書いてあるとおりなのよね。それはわかるさ。でもさ、それが出来ないのよね。まったくの教科書でげんなり。久々に読んでて辛くなったビジネス書でした。

【本】日本の政治宗教@宮田光雄

050716_027   30年前に書かれた靖国反対本。30年前といえば、今年は戦後60年。だから歴史時間軸的にちょうど中間地点で今、小泉政権の大いなる論点でもある靖国問題についてその当時の状況を知る資料なんだな。
 面白いのは、小林よしのりが「左翼」を「サヨク」と表現するがごとく、この宮田っつー当時東北大学法学部の教授は、「靖国」を「ヤスクニ」って書くんだな。この時点でこの本がどっち側の思想を体系づけているかわかるな。
 しかしまー、なんとなく言いたいことはわかるが、正直、表現が難しすぎるわい。でもなぜ歴代首相(自民党総裁)が靖国公式参拝を目指すのか、それは宗教法人靖国神社が自民党の支持基盤、大いなる票田であるから、など結構、納得できる部分も多く、さらに後半では公明党の奇奇怪怪なる政教一致体制批判にも声を荒げるなど、政治と宗教の知的な思想関係を垣間見るにはちょっとはためになった感じ。
 次回、東京出張の折には、まだ未体験ゾーンの靖国神社、行ってみるかな。

【本】インモラル@杉本彩

050716_001  昨年、映画「花と蛇」をこっそり観て衝撃を受けたのはもちろん、DVDのオマケ映像で杉本彩へのインタビューがあったんだが、そこで語られる彼女の反骨精神というか、反体制思想というか、その彼女のカウンター精神に興味を持った。できれば彼女に一度お会いしてお話したいと思ったわけだが、こちらも忙しくてなかなかお会いする機会が無く今に至って、この本「インモラル」を読んでみたりした。
 はっきり言ってエロ小説なんだが、その内容の希薄さにげんなり。主人公の女優、森野美咲の色恋沙汰から紡がれる激しい性描写について、森野美咲自身が小説の中でまた自身をモデルにしたと読者を惑わせる小説を書いてみたりと、とにかく主人公森野美咲を杉本彩に見立てようとする著者の意図か編集者の意図かが見え見えで、ちょっと、ひいてしまいながらも全部読むんだけどね。
 でもま、これで「花と蛇2」は観ないな。きっと。いや、見るかな。

【本】お客さんに良くなってもらいてぇんです。

050625_010 北九州の同志K氏からこの本の著者であり、株式会社ピー・ディー・アールの沼澤拓也社長を紹介されてもピンと来ず、本を送るからと言われても生返事で、本が届いたことさえ連絡せず、まして封も切ってなかった。しかし、ある日K氏から「届いたことぐらい連絡して欲しい」旨のお叱りを受け、まったくそうだ。こりゃ大変失礼なことをしたわい、と封を切ると左の写真。050625_011

なんとも、丁寧に心のこもった送付状とサインが。自分が恥ずかしくなった。この本に書いてある「想い」。相手の心に対し、手を抜いていた自分。なんたる失態。読み出すと目からうろこ状態に。顧客対応履歴の重要さとそれを活かしたアウトバウンドセールスでお客様のお役に立ち、いかに実績をあげるか、って講演録の内容なんだけど、ほんと、自分の甘さをことごとく突いてくる内容で、全くの未読だったんだけど、福岡からの帰りのバス中、この講演と同様の約2時間半で読了。今さっき、作者の沼澤社長にお詫びとお礼の手紙を書き終えたところ。

 あー、なんだ、なんだ。さっさとやんなきゃなんないこと片付けて、今の営業の仕組み変えたくなってきたー!ありがとう。K氏、沼澤社長。

【本】すごい会議

050625_007  鹿児島福岡往復道中に持込んだ4冊のうちビジネス書2冊のうちの1冊。武沢さんのメルマガで紹介されてたので、アフェリエイト協力。¥チャリーン¥

 こんな会議が出来たらとは思うけど、現実的に難しいですな。でも頭の隅っこにはとどめとこ。実際、ボクがこれまで試してきたことなんかも書いてあって、それをさらに補完する(しかも強力に!)内容。さぁ、どうしよう!?

 でも、この本の面白さは、作者の大橋禅太郎氏がシリコンバレーでやってきたガズーバの創業物語がかなり面白い。一見アホかと思うような行動を通して人の心を動かしていく様はボクの思考と相通ずるものがあるが、その成果は自分の成果と比べて途方も無く大きな隔たりがあるなぁ。。さぁ、どうしよう!?

【本】調律の帝国

050625_006  「長距離走者の孤独」を読みながら同時に読みたくなった本(というか作者)があって同じ本屋で購入。見沢知廉「調律の帝国」。調べるとなんともう絶版なんですな。「長距離走者の孤独」との共通性は、囚人もの、という点。しかも、見沢氏は自らの収監実体験に基づいた獄中文学の旗手である。(アラン・シリトーも前科ありそうではあるが・・・違ったら大変失礼。。)かつて「天皇ごっこ」や「囚人狂時代」を読んだときの強烈なインパクトは忘れられない。とにかく左から右へ、思想の突端に位置しながら常に反体制の姿勢を貫く刑務所内外での行動は、すさまじいとしか言いようが無い。

 この「調律の帝国」は、獄中で小説を創作することで罪をあがなおうと戦う政治思想犯Sを主人公とした創作だが、見沢氏自身がいかにして原則禁止されている獄中で作品を書くという戦いに挑んだかが克明に記されているのだが、あとがきにもあるようにどこで検閲をすりぬけたか、マジでヤバイ獄中の囚人に対する非人間的扱いに関する内容が随所に出てくる。でも、Sは戦う。意識が朦朧となりながらも非服従の姿勢を貫く。「天皇ごっこ」「囚人狂時代」を読み返したくなる衝動に駆られるが、やめとこ。

【本】長距離走者の孤独

050625_008 詩音が書きやがってくれてますが、昨日は野暮用で日帰りで福岡へ。福岡行きは1995年ぐらいの福岡単身赴任時代からの習性でもっぱらバス。理由は、シートが電車に比べてラクで読書や文章書くのがすすむから。今回も往復の道中約8時間で自分にコミットしたのは、読みかけの3冊と未読の1冊を読了し、時間が余ったらRMOの11月公演の企画を練ること。050625_005 結果は、見事4冊読了。でもRMOの企画は手付かず。

 ってことで、読んだ4冊についてそれぞれまとめておきます。まずは、アラン・シリトーの名著「長距離走者の孤独」。この作品は、学生時代に飲んだくれて先輩宅に寝泊りしてた、ある日の午後、二日酔いのまま手を伸ばしたらそこにこの本があって、なんとなしにゴロゴロしながら読んでたら面白くて一気にそのまま読了した記憶があり、先日、本屋をうろうろしてたら「よぉ、久しぶり」てな感じで、ボクの眼前に飛び込んできて、そのまま購入。再び読んでみると、コレ短編集だったってことに気付く。だから、二日酔いのまま読了したって記憶は、8編のうちの1編「長距離走者の孤独」のみを読み終わった記憶だったんだな。どうりで。

 逃げ足の速い、盗みの常習者である少年囚が感化院代表でクロスカントリー大会に出るのだが、楽に勝てる試合で、実力どおり勝つことは感化院側の思惑通りになることに反抗、走行中の壮絶なる孤独感の中における心理状態で、ナニが自分にとっての勝利なのか・・・。

 他の短編も、うだつの上がらない皮革職人や妻に逃げられた夫、生徒に信頼されない教師などとにかく孤独、孤独、孤独。「長距離走者の孤独」は、反抗という一種の爽快感を伴うものだったが、その他は暗い孤独な男のことばっかりで、ちょっと気が滅入ってしまった。

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